
政府は、「経済財政運営と改革の基本方針(骨太の方針)」の原案をまとめました。
人手不足対策として、外国人材の受け入れを拡大するため、新たな在留資格を創設することがポイントです。
政府は現在、単純労働の分野で外国人の就労を原則として禁止していますが、医師や弁護士など高度な専門性を持った人材は積極的に受け入れ、家族の帯同も認めています。
今回の原案による新たな在留資格の対象は、人手の確保が難しく、業種の存続・発展のために外国人材の受け入れが必要と認められる業種(農業、介護、建設、宿泊、造船)の5分野を想定しています。
最長で10年の就労が可能
日本では約128万人の外国人が働いています。
その内訳は、人数の多い順に、
- 永住者や日本人と結婚した人、
- 留学生などのアルバイト、
- 技能実習生、
- 専門性が高い医師や研究者など
です。
技能実習生は約25万8,000人で、5年前のおよそ2倍に膨らんでいます。
今回の原案では、技能実習生に対する5年の就労延長を想定した新資格の創設を明記しました。実現すれば、最長で10年の就労が可能になります。
政府は秋の臨時国会にも出入国管理法改正案を提出し、来年4月からの導入を目指します。
さらに、骨太の方針では、新資格を得た人が日本語や専門分野の試験に合格すれば、在留期限の上限を撤廃し、家族の帯同も認める考えも掲げました。
技能実習制度が骨抜きになるとの懸念も
1993年に始まった技能実習生制度は、本来、途上国への技術移転が目的でした。
日本での就労期間が延びるほど、身に付けた技術を母国で活かす機会は遠のきます。
今回の案は、技能実習制度を骨抜きにする可能性も指摘され、事実上の移民政策につながるとの懸念の声も上がっています。
法務省「センター」で在留情報を一元管理
政府は、法務省に「在留管理インテリジェンス・センター」(仮称)を設け、雇用や婚姻などの情報を一元管理させることで、不法就労を防ぐとしています。
法務省は、新設する在留管理インテリジェンス・センターが外国人労働者の離職や転職などの状況を把握しやすいよう、雇用保険を所管する厚生労働省との情報共有を進める方針です。
日本人と結婚した外国人が離婚した場合などに自治体と提携して情報を得るための法整備を進めます。
また、外国人留学生の勤務先や勤務時間の管理を強化し、法定時間(1週間あたり28時間以内)を超えれば、在留許可を取り消す方針です。