月に240時間以上の長時間労働をしている人が、この10年間で減少したことが、東京大学社会科学研究所の石田浩教授らの調査でわかったと報じられました(朝日新聞5月18日付)。
報道によれば、月に240時間以上の長時間労働をしている男性の「典型雇用」(正社員など)では、2007年の35.4%から、2017年は23.7%まで減少しました。同じく女性の典型雇用でも12.1%から8.2%に減少。「非典型雇用」(契約社員など)でも減少傾向が見られました。
月240時間労働は過労死ライン
月に240時間以上の長時間労働(月の労働日を20日として、1日12時間以上の労働)は、いわゆる「過労死ライン」に抵触する危険な水準です。
脳卒中や心臓病などの発症率が高く、いざ労働災害認定となった際には業務との因果関係が認められやすくなります。労働者・企業の双方にリスクがある危険な働き方です。減少傾向にあるとはいえ、23.7%という結果は、いまなお高いというべきかもしれません。
帰宅する時間も早まっている
また同調査では、働く人の「平均帰宅時間」も早まったことがわかりました。
この10年間で、男性は午後8時2分から同7時48分へ、女性は午後6時48分から同6時1分へ、それぞれ短縮しました。
過労死ラインレベルの長時間労働だけでなく、平均的な労働時間も短縮しているといえそうです。
働く人の意識は変化し続ける
帰宅時間については、より長いスパンで比較した調査もあります。
シチズン時計株式会社「『ビジネスマンの生活時間』35年の推移」によれば、「「遅い」と感じる帰宅時間」は、1980年から2000年までは「23時」がトップでしたが、2010年には「22時」がトップ、2015年には「21時」がトップと、この35年間、年々早まる結果となりました。
同調査は、リーマン・ショック(2008年)や東日本大震災(2011年)の影響から生活様式が見直され、働き方にも意識の変化が見られる、と指摘しています。その後も過労死事件の社会問題化や働き方改革等もあり、働く人々の労働時間への意識はさらに高まっています。
企業としては、労働者の意識や世相の変化から取り残されないよう、常に注意が必要でしょう。