定年延長や、人手不足を背景として、働く高齢者が増えています。
現在では、65歳以上の労働者は、労働力人口の12.8%を占めています。
このような状況にあって、働く高齢者の労働災害が問題となってきました。
厚生労働省「労働災害発生状況」によれば、2018年に労災に遭った60歳以上の労働者は、前年比10.7%増の3万3,246人で、労災全体の4分の1を占めています。
高齢者の労災を防ぐためのカギは「転倒防止対策」
60歳以上の労働災害の中でも目立つのは転倒事故で、37.8%を占めます(全世代では転倒による労災事故は25%程度)。転倒防止対策が、高齢者の労働災害減少のカギとなるといえます。
転倒は、段差でつまずいたり、バランスを崩してしまったりすることにより起こります。
特に高齢者の場合、下肢の筋肉の衰えが影響して、転倒しやすくなるものと考えられています。
また、年齢を重ねるとともに、視力や握力、バランス保持能力といった身体機能は低下しますが、こうした身体機能・認知機能の低下に気がつかず、自分では「できる」と過信して無理な動作をしてしまうことも、転倒の原因となります。
職場内の段差を極力なくす、通路を整頓して通行しやすくするといった対策を講じるとともに、実際の身体機能と本人の認識のズレを正すためのチェックを受けてもらうことも効果的といえるでしょう。
これからも増え続ける「働く高齢者」のために
政府は現在、「希望する人が70歳まで働ける機会の確保」を努力義務として企業に課す方針を打ち出しています。働く高齢者がますます増えることが想定される中、高齢者が安心して働くことのできる職場づくりが必要となります。
働く高齢者の労働災害を防ぐため、安全確保に取り組む中小企業を対象とした助成制度も新設される見込みです。
この機会に、改めて、働く高齢者のための環境整備について考えてみませんか。
【参考】厚生労働省>労働災害発生状況
https://www.mhlw.go.jp/bunya/roudoukijun/anzeneisei11/rousai-hassei/