使用者側に責任がある事由によって労働者が労働を提供できない(休業)場合、その休業期間中の生活保護を図るため、使用者は労働者に対し平均賃金の100分の60以上の手当(休業手当)を支払うことを定めたもの。
民法第536条第2項との関係
民法第536条第2項
労働者が労働の提供をできない原因が、使用者の責に帰すべき事由である場合、労働者は賃金を受ける権利を失わない=100%保証を求めることができる。
法規 | 支払額 | 使用者の責めに帰すべき事由 | 法規の強行性 |
労基法第26条 (休業手当) |
平均賃金60% | 使用者として不可抗力を主張できない一切の事由 |
強行法規 (罰則あり) |
民法536条第2項 (債務者の危険負担) |
賃金100% | 故意・過失またはこれと同視できる場合 |
任意法規 (特約で排除できる) |
(労基法第26条休業手当は)強行法規で平均賃金の100分の60までを保障しようとする趣旨の規定であって、民法第536条第2項の規定を排除するものではない。(昭22・12・15基発502)
使用者の責めに帰すべき事由
使用者の故意、過失又はこれと同視すべきものより広く、不可抗力によるものは含まれません。
不可抗力による(=使用者の責に帰すべき事由ではない)というためには2つの要件が必要と考えられています。
- 事業の外部にある原因により発生する事故であること
- 使用者が経営者として十分な注意を尽くしても避けることができない事故であること
(例)新型インフルエンザに関連して労働者を休業させる場合
使用者の責めに帰すべき事由に当たらない =休業手当の支払義務なし |
使用者の責めに帰すべき事由に当たる =休業手当の支払義務あり |
発熱等により労働者が自主的に欠勤する場合
新型インフルエンザに感染した労働者が医師や保健所の指導・要請により休業する場合
労働者の家族が感染したため、労働者の感染者近くにいたために「濃厚接触者」で有ることを理由として、保健所から外出自粛協力要請がなされる場合で、これを踏まえ労働者を休業させる場合 |
医師や保健所の指導・要請の範囲を超えて企業の自主的判断として休業させる場合(=外出自粛期間経過後も休業させる場合など)
労働者の家族が感染したため、労働者の感染者近くにいたために「濃厚接触者」であることを理由として、保健所から外出自粛協力要請がなされる場合で、保健所の外出自粛協力要請の範囲を超えて労働者を休業させる場合
事業場における感染防止のため、企業の自主的判断として、新型インフルエンザに感染した労働者以外の労働者についても職場単位又は事業場単位で一律に休業させるなどの措置をとった場合 |