厚生労働省がまとめた令和2年度「能力開発基本調査」(令和2年12月1日時点の状況についての調査)の結果によれば、企業の教育訓練への費用の支出状況をみると、OFF-JTまたは自己啓発支援に支出した企業は49.7%で、令和元年度調査(以下「前回」という)の57.5%と比べて減少しています。
計画的なOJTについて、正社員に対して実施した事業所は56.5%(前回64.3%)、正社員以外に対して実施した事業所は22.3%(前回26.5%)となっており、こちらも前回同様減少しています。
コロナ下において、企業の様々な活動に影響が出ているところですが、社員の教育訓練に関する分野にも影響を与えていることが予想できます。
能力開発や人材育成に関して問題があるとする企業が7割以上
能力開発や人材育成に関して何らかの問題があるとする事業所は74.9%で、前回と比べてやや減少しているものの、多くの企業では、人材育成に関する問題があると考えていることがうかがえます。
問題点の内訳は、「指導する人材が不足している」(54.9%)が最も高く、「人材育成を行う時間がない」(49.4%)、「人材を育成しても辞めてしまう」(42.6%)と続いています。
コロナ下でオンライン研修などの取組みも進んでいる
株式会社パーソル総合研究所が実施した、企業におけるオンライン集合研修の実態に関する調査によれば、オンライン集合研修を増やした企業の割合は75%にも上ったそうです。
対面での実施が難しい中、これまでと異なる手法で教育訓練を実施した企業も多かったのではないでしょうか。
今後求められる企業の能力開発への取組み
日本では、GDPに占める企業の能力開発費の割合が、他の先進国と比べても低いといわれており、米企業と比べると20分の1ほどしかないそうです(2018年「労働経済白書」)。このような実態を国も問題視しており、2021年6月に政府が提示した骨太の方針でも、「リカレント教育等人材育成の抜本強化」が掲げられています。今後、国を挙げた取組みが進むとともに、労働者側でもキャリア形成に関する意識が高まってくることが予想されます。
このような動きは、企業としても人材確保の観点から無視できないところです。
今後は、自社の生き残りのためにも、新入社員のみならず、中堅社員等までも対象にした能力開発に係る新たな取組みを模索していく必要があるでしょう。
【参考】厚生労働省>令和2年度「能力開発基本調査」の結果を公表します
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/newpage_19368.html
【参考】株式会社パーソル総合研究所>オンライン研修の実態に関する調査結果を発表_コロナ禍で進む集合研修のオンライン化。企業の75%が増えたと回答
https://rc.persol-group.co.jp/news/202107051000.html