独立行政法人労働政策研究・研修機構では、2021年6月に「70歳就業時代の展望と課題―企業の継続雇用体制と個人のキャリアに関する実証分析―」という報告書を公表しました。
65歳以降の雇用・就業機会の拡大に向けた人事労務管理を考える上で参考になるポイントがあります。
年齢に関わらない評価と賃金制度が求められる
70歳までの就業確保を義務化する政策がすすめられていますが、継続雇用が促進されると、各企業は人件費負担を考慮し、高年齢従業員の賃金や仕事内容等を工夫する必要に迫られます。
報告書では、(政策的には)「仮に65歳以降の就業機会の更なる拡大を目標とするなら、60歳前後で仕事内容や責任を変化させる体制から、変化を伴わない雇用継続のあり方へと変えていくことが重要である。」とし、効果的なこととして、高年齢者に対して「技能やノウハウの継承」という役割を強調しすぎないこと、年齢に関わらず評価等に即して賃金を決定していく制度を導入することを挙げています。
労働者個人の感じ方にも留意が必要
ただ一方で、60代前半の労働者個人の感じ方としては、60歳または定年到達前後で仕事が変わらないことは、仕事や責任が変わることに比べて、必ずしも満足しているとはいえないとの結果も出ています。
60歳や定年という節目で気分一新し、新たな学びや成長につなげたいというのが、一般的な感情なのかもしれません。
従業員とのコミュニケーションをとりつつ、自社の事情に合った制度の検討を
各企業の労務管理においては、従業員の体力等への配慮や、雇用・就業年齢がこれまでよりも上がることを見据えた、従業員とのコミュニケーション促進策が必要になると思われます。
我が国は高齢化社会に向かっていますし、いずれ誰もが高年齢者になります。
採用や賃金への影響も考えながら、自社の事情に合った、高年齢者の雇用維持・確保方法を検討する必要があるでしょう。
【参考】独立行政法人労働政策研究・研修機構>労働政策研究報告書No.211>70歳就業時代の展望と課題
https://www.jil.go.jp/institute/reports/2021/0211.html