顧客による理不尽・悪質なクレームを指すカスタマーハラスメント(以下、「カスハラ」)という言葉は、ここ数年でよく聞かれるようになりました。
最近はカスハラを深刻な問題ととらえ、接客業を中心に、制度の見直しや法令の改正等の動きもみられます。
例えば
運送業では、SNS上での中傷のリスクのあったバスやタクシー運転手の氏名表示が、2023年5月に廃止されました。
旅館業界では同年12月に施行された改正旅館業法で、不当な要求等を行う者に対し宿泊を拒否できるようになりました。
さらに、東京都ではカスハラ防止条例を制定する方向を示しています。
また、自民党はカスハラからの従業員保護策を企業に義務付ける法整備等の提言を行うなど、社会全体におけるカスハラ対応の勢いは増しています。
企業としても、カスハラの予防・対処や従業員の保護は重要な課題となっています。
厚労省は2022年2月、カスハラの対応基準等を示した
「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」を公表しています。
また、JR東日本などをはじめとして、企業がカスハラ対応指針を策定・公表する事例も続いています。
2022年9月22日に心理的負荷による精神障害の労災認定基準が改正され、カスハラが新たな対象となったことも重要事項です。
UAゼンセンのアンケート結果から
そのようななか、UAゼンセンはサービス業に従事しているUAゼンセン所属組合員に対するカスハラ対策についてのアンケート結果を公表しました。
これによると、カスハラ被害自体は前回調査時から減少している(「あなたは直近2年以内で迷惑行為被害にあったことがありますか」という質問に対し46.8%が「あった」と回答。2020年時調査の56.7%から減少)ものの、回答者の半数近くがパワハラ被害の経験があることからも、依然として深刻な状況にあることがうかがえます。
迷惑行為をしていた顧客のうち、50歳代以上が75.7%と大きな割合を占めているということです。
また、カスハラには「時間拘束型」、「暴力型」、「威嚇・脅迫型」、「SNS/インターネット上での誹謗中傷型」、「セクシュアルハラスメント型」といった型があり、業種・業態によっても特徴や傾向、対応が異なる(例えば、介護・福祉等を含む業種グループでは対応者は女性の割合が高く、被害回数が多くて被害期間も最も長い特徴をもち、他のグループに比べより毅然とした態度や危機退避が求められる、など)とのことです。
社会的な認知・対応が進んできたとはいえ、カスハラはさまざまな業種において深刻な被害をもたらし、生産性にも影響を与えています。
UAゼンセンは上記の調査を踏まえ、総合的な施策の推進を目的とした協議会の設置や、事業者に任せきりにするのではなく、社会的な合意形成に向けた周知活動・消費者教育の強化等が必要としています。
事業主として、社員の働きやすさ・安全の確保に努めることは重要です。
とくに人手不足の社会において、そうした施策を進めることは離職防止にも役立ちます。
とくに顧客対応業務の多い企業においては、一歩進んだ対策を検討してみてはいかがでしょうか。
【参考】UAゼンセン>“職場におけるカスタマーハラスメントの実態把握へ”第3弾調査実施」
https://uazensen.jp/2024/06/05/100876/