財政検証は「年金の健康診断」ともいわれ、5年に一度、今後100年間の年金財政がもつかをチェックするものです。
給付水準の調整終了年度と最終的な所得代替率の見通し
会社員の夫と専業主婦世帯のいわゆる「モデル年金」は、今年度は月額22万6,000円で、現役世代の男性の平均手取り収入37万円に対する割合(所得代替率)は、61.2%です。
なお、所得代替率は、法律で50%を下回らないことが約束されています。
今の年金制度は、将来に備えて、給付水準を物価や賃金の上昇率よりも低く調整する「マクロ経済スライド」が行われていますが、4つの経済前提ケースで、調整終了年度と所得代替率は以下のとおりとなりました。
(1)高成長実現ケース(経済成長率1.6%、賃金上昇率2.0%)
→2039年度に調整終了。所得代替率56.9%。
(2)成長型経済移行・継続ケース(経済成長率1.1%、賃金上昇率1.5%)
→終了年度2037年度。所得代替率57.6%
(3)過去30年投影ケース(経済成長率▲0.1%、賃金上昇率0.5%)
→終了年度2057年度。所得代替率50.4%
(4)1人当たりゼロ成長ケース(経済成長率▲0.7%、賃金上昇率0.1%)
→2059年度に国民年金の積立金がなくなって所得代替率が50.1%となり、その後、37%から33%程度まで下がる
私たちにとって近年の実感に近いケースは(3)ですが、
その場合の所得代替率は50.4%と、政府目標をぎりぎり上回る結果となりました。
オプション試算
そのほか、次のようなオプション試算も行われています。
(1)被用者保険の更なる適用拡大を行った場合、
(2)基礎年金の拠出期間延長・給付増額を行った場合、
(3)マクロ経済スライドの調整期間の一致を行った場合、
(4)65歳以上の在職老齢年金の仕組みを撤廃した場合、
(5)標準報酬月額の上限の見直しを行った場合、
の5つのケースについて、
それぞれ4つの経済前提の下で試算が行われました。
これらが来年の年金制度改正案に盛り込まれる可能性があります。
なお、厚生労働省は、(2)の基礎年金の拠出期間延長・給付増額の導入は見送るとしています。
【参考】厚生労働省>将来の公的年金の財政見通し(財政検証)」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/nenkin/nenkin/zaisei-kensyo/index.html